限定250部
小倉遊亀が描いたただ一点の満開の桜図 ―奈良女子大学緞帳原画―
爛漫
この絵は、奈良女子大学の5階から見た若草山の山並みをバックに、大きな古い桜の威樹が、今や満開に咲きほこった光景を描きました。
左の上手には東大寺の金の鴟尾(しび)の大屋根が、右下手の花にはすれすれに、興福寺の五重塔の一部分がチラと見えているのは、奈良を表したもので、画面一ぱいに咲きほこる桜の花には一点の不純さもなく香気ふくいくと両手をひろげて、己の力をすべて出しています。
満身の力を出し切ってする仕事ほど美しいものはありません。
小倉遊亀
この作品は奈良女子大学講堂の緞帳の原画として描かれたものである。奈良女子大学は、1983年に講堂を新築している。それまでの講堂は学校本館の2階にあったが、現在この建物は記念館となっており、国の重要文化財に指定されている。本作を原画とする緞帳があるのは、新築された現在の講堂である。
奈良女子大学の前身である奈良女子高等師範学校は、東京女子高等師範学校(現お茶の水女子大学)に次いで設立された国立の女性教員養成機関で、当時の女子学生にとっては最高学府であった。難関校であった奈良女子高等師範学校へ、小倉遊亀は1913年に入学しており、卒業も総代という才女であった。小倉は選修科目で図画を選択し、これが画家の道へ進むきっかけになったという。
この画家が描いた桜は力が漲っており、画面いっぱいに枝を伸ばす。桜の生命力、華やかさを見事に表現しており、奈良女子大学の学章も桜をモチーフにしたものであることを考えると、桜はエネルギーに満ち溢れた後輩たちの姿なのかもしれない。原画と同図様の緞帳の桜は、後輩の前途を祝して「爛漫」と題したと言う小倉遊亀の言葉通り、現在も後輩にエールを送るように燦然と輝いている。
柳原正樹(京都国立近代美術館元館長) ※付属解説書より抜粋
■制作にあたり奈良女子大学と京都国立近代美術館に、全面的ご協力をいただきました。
■「彩美版Ⓡ」により繊細な色遣いや、気品のある色彩を再現し、桜の花びらや背景の金と銀には、一枚ずつ手作業でシルクスクリーンを施しています。
■高級感あふれるシルバー塗装のフレームが、作品を明るく華やかに引き立てます。和室にも洋室にも合う国産ハンドメイドの特製額です。
■著作権者・小倉家監修の証しとして、画面と奥付に承認印が捺されています。
彩美版とは:画材の質感と豊かな色調を再現するために生み出された新時代の画期的な技法による複製画です。彩美版の特徴である先端デジタル加工処理技術と高精度プリント、さらには一枚一枚職人の手刷りによるシルスクスクリーンを施し、豊かな色彩や作家の筆遣い、原画の持つ絵の鼓動までをも表現いたしました。(彩美版は共同印刷株式会社の登録商標です)
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