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日本画家・平松礼二―「睡蓮」との邂逅
日本画の巨匠・平松礼二画伯と「睡蓮」との出会いは、50歳を過ぎてから初めて訪れたパリでの個展がきっかけでした。その時に軽い気持ちで訪れたオランジュリー美術館の楕円形のギャラリーに展示されている「睡蓮」大装飾画に、くぎ付けになったそうです。
長大な睡蓮シリーズを一堂に見てからは、それまでの印象派画家への認識が一変。巨匠クロード・モネの眼を通して、もう一度、日本を再発見してみたいという思いがあふれ、「睡蓮」の足跡をたどり、対話を重ね、ジャポニスムへの旅路が始まりました。
もともと中学生の頃、洋画家であった美術部の先生の影響から油絵に興味を持っていた平松画伯は、モネ、セザンヌ、マネ、ゴーギャン、ゴッホなど印象派画家の画集を穴が開くほど読み、日本画よりも、美術の教科書に大きく登場する印象派にあこがれをいただいていたそうです。しかし、高校生になると西洋美術一辺倒の日本の美術教育に疑問を持ち、しだいに心は油絵から離れていき、高校3年時のコース選択で日本画の道へ進むことを決意しました。
日本画家として初期の頃は、大地に地脈が走り、生気みなぎる力強い作品を数多く描きましたが、オランジュリー美術館の「睡蓮」大装飾画に衝撃を受けて以来、ジヴェルニーのモネの庭園を頻繁に訪れて、自然が本来持っている華やかさを表して睡蓮を描きました。平松画伯は、今までに数多くのすばらしい作品を描いていますが、その中でも2011年に描いた「色彩のカルテット―睡蓮」は、ジヴェルニー印象派術館での初めての個展に出品した記念すべき作品です。この度、原画を所蔵するジヴェルニー印象派美術館から正式許諾を受け、平松画伯から本紙の監修とともに、サインと落款をいただき、「色彩のカルテット―睡蓮」彩美版を制作しました。水面を漂う睡蓮があり、四季の移り変わりがあり、過ぎ行く時間があり、水面に映る雲がある……。それらすべての事象を前に、日本画家・平松礼二画伯が自問自答しつつ、モネの庭の由緒ある睡蓮を描いた逸品を、ぜひお手元でお楽しみください。
作品解説
「色彩のカルテット―睡蓮」は1回目の個展の出品作である。ジヴェルニーのモネ財団の水の庭に生き続ける睡蓮を写生中に、思いついたのは、西洋にはない屏風に仕立てる。鉢植えで池に点在する睡蓮を元の姿に戻し、春と秋の彩を同時に描き、あたかも日本の着物の春秋図として表現したらどうなるかとの実験作だ。ひそかに心配した批判は起こらず、拍手で迎えられた。それからドイツ・ベルリン国立アジア美術館へも巡回展示されたが好評であった。日本画家が、ふとした偶然からはじまったジャポニスム源流を探る旅は、今も続いている。