限定300部
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「色彩の魔術師」マティス、最後の油彩作品
フォービスムの旗手
アンリ・エミール・ブノワ・マティスは1869年にフランス・パリ北東のカトー＝カンブレジで生まれました。病気療養中に絵具を贈られたことをきっかけに、21歳から絵を描き始めたマティスは、その後美術学校に通い、92年からはギュスターブ・モローのアトリエに出入りするようになります。モローは個性の尊重を重視する指導方針であり、マティスは彼を師と仰ぎながら研鑽を積んでいきました。マティスにとって転機となったのは1905年に参加したサロン・ドートンヌ（秋の合同展）でした。マティス、ドラン、ブラマンクらの作品たちが自由で強烈な色彩を用いた作品を展示し、この展示室は美術批評家のルイ・ボーグによって「フォーブ（野獣）の檻」と形容されました。この言葉から「フォービスム（野獣派）」という言葉が生まれ、ここでマティスの作品が売れたことで彼の作品は支持を受けるようになってゆきます。
その後も、フォービスムでの革新的な表現にとどまることなく、生涯を通じて、絵画、彫刻、版画、切り絵など様々な技法を用い、類まれなる創造性で自身の芸術を探究し美術史上に大きな足跡を残しました。当時のアートシーンだけでなく、後進の芸術家たちにも多大な影響を与えたマティスは、20世紀を代表する芸術家の一人として、いまも世界のいたるところでその作品が展示され愛されています。
絵画作品の集大成「赤の大きな室内」
マティス晩年の代表作と言われるロザリオ礼拝堂は、デッサン、彫刻、切り紙絵といった技法を駆使し、建物の設計から装飾まですべてをマティスが手掛けた総合芸術作品です。この礼拝堂に取り組む前年に描かれたのが、マティス最後の絵画連作「バンス室内画」にして、最後の油彩作品「赤の大きな室内」です。
複雑に塗り重ねられた赤い室内。よく見ると画面内には二つずつ、同様のモチーフが描かれています。壁には二つの絵画、片方は白黒のデッサンで風景を切り取り、もう片方には椅子に乗せられたパイナップルが描かれています。その下に置かれた二つのテーブルの一方は円卓、もう一方は長方形、その上には花瓶や食器などが置かれています。さらにその下方には動物の毛皮のようなものが二つ。一枚の絵の中には様々な要素が調和をもって表現されています。
本作に取り組んだ当時のマティスは78歳。晩年においてなお、新たな表現の探求への情熱が尽きることはなく、モチーフや色彩を対比させ、複数の要素を組み合わせることに大きな好奇心を抱き、独自の色彩表現を前進させていました。
このたび、マティス没後70年を記念し、ポンピドゥー・センターが所蔵するマティスの名作「赤の大きな室内」を、2023年に約20年ぶりにマティスの大規模な回顧展を開催した東京都美術館の館長で美術史家の高橋明也氏を監修者に迎え、限定300部で制作しました。
マティス独自の感性が光り、鮮やかな赤に目を奪われる、最後の油彩作品をぜひお手元でお楽しみください。
【作品解説】
パリのポンピドゥー・センターには、初期から晩年にいたる見事なマティス作品のコレクションが収蔵されている。中でもこの「赤の大きな室内」は、ニース/バンス時代を代表する作例の一つである。（中略）
画面全体は大きく薄塗りの赤い色彩で覆われ、マティス家で日常的に用いられていたテーブルや椅子、さらに壁には絵画が黒い線で描き出されている。多くのマティス作品の例に漏れず、色面の二次元、三次元の区別は定かではなく、平面的に広がる一様な空間の中に身近な親しみ深いモチーフが散りばめられている。鉢植えの植物や切り花が置かれたテーブル面からは、愉し気で明るい、きわめて前向きな画家の気分が伝わってくるようだ。まるで、これまでのマティスの油彩画のすべてがまとめられたような魅力的な画面である。しかしこの時期、マティスはバンスのドミニコ会・ロザリオ礼拝堂装飾の仕事に取りかかる。さらなる新しいステージに向かって、79歳のマティスは歩みを進めていたのだ。（付属解説から抜粋）
高橋 明也（美術史家・東京都美術館館長）
高橋 明也（たかはし・あきや）
1953年東京都出身。パリ・オルセー美術館開館準備室勤務などを経て、国立西洋美術館学芸課長。三菱一号館館長、東京都美術館館長を歴任。専門はフランス近代美術。主な企画展覧会に「ワシントン・ナショナル・ギャラリー展」（2015年）、「ラファエル前派の軌跡展」（2019年）など。主な著書に「もっと知りたいマネ」「かわいい印象派」など。2010年フランス芸術文化勲章シュバリエ受章。
■2024年のマティス没後70年を記念し、限定300部で製作。
■原画所蔵元である、ポンピドゥー・センターから正式画像の提供を受けて製作しました。
■2023年に20年ぶりの大規模な回顧展を開催した、東京都美術館の高橋明也氏による監修のもと製作しました。
■付録として、高橋明也氏による作品の魅力が良くわかる解説が添えられています。
彩美版とは：画材の質感と豊かな色調を再現するために生み出された新時代の画期的な技法による複製画です。彩美版の特徴である先端デジタル加工処理技術と高精度プリント、さらには一枚一枚職人の手作業によるシルスクスクリーンを施し、豊かな色彩や作家の筆遣い、原画の持つ絵の鼓動までをも表現いたしました。（彩美版は共同印刷株式会社の登録商標です）
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