限定130部
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至高の探求者、速水御舟
速水御舟は、一つの様式にとどまることなく、さまざまな画風を試み、常に新しい表現を追求し続けた夭折の画家です。1908年に14歳で松本楓湖に入門して、やまと絵の世界から出発し、兄弟子の今村紫紅の感化によって南画的な風景画に移りました。1917年の再興第四回院展に出品した「洛外六題」で横山大観や下村観山らを感嘆させ、23歳の若さで日本美術院の同人に推挙された御舟は、やがて西洋画の写実に目を向け、同時代の洋画家、岸田劉生の細密描写を日本画に取り入れていきます。その後、武蔵野の平林寺に参禅したのち、1925年に写実の中に幻想性を漂わせた、本作「炎舞」を創り上げました。昭和期に入ると、江戸時代の琳派の装飾性や画面構成を取り入れた大作「翠苔緑芝」や「名樹散椿」を生み出したのち、晩年には、水墨画を描き、さらに真の美を求めていきます。ひとりの作家が創作したとは思えないほど多様な表現を展開し、細密描写、写実と装飾を融合した画風にと、次々に新境地を開拓し続け、1935年に40歳で亡くなるまで、短くとも濃密な生涯を駆け抜けました。
日本絵画史に残る 重要文化財「炎舞」
速水御舟を象徴する大作「炎舞」は、1925年夏に家族と滞在した軽井沢にて、夜の庭で行う焚火の明かりに誘われる蛾から着想を得て創られました。
夜の深い闇に高々と燃え上がり、変化する炎の色と形の不思議な美しさ。その炎にまとわりつき身を焼き尽くす、彩り鮮やかな蛾の舞い。どこか妖艶で不思議な生命を感じられる蛾の姿にインスピレーションを感じたのでしょうか。
この速水御舟を象徴する「炎舞」は、同じく御舟が1925年に描いた「名樹散椿」とともに、1977年に重要文化財に指定され、名実ともに日本絵画史に残る至宝となりました。
絹本に丹念に描き込まれた蛾の表面の美しい模様と背景の深い闇、そして燃え上がる火焔の対照的な描写と併せて、この作品に込められた速水御舟の精神を余すことなく表現した「炎舞」彩美版。見る者の心に響き、神秘的な世界へと誘う、日本美術史に残る傑作を、ぜひお手元でお楽しみください。
速水御舟「炎舞」
1925（大正14）年夏、御舟は軽井沢に約3カ月滞在して毎晩のようにたき火をし、炎とそこに群がる蛾を観察したという。「炎舞」の炎は遠くから見るとリアルに見える。御舟の妻によれば、軽井沢滞在中のある日、外出した家族が帰宅した際、洋館の2階の窓に立てかけられていた「炎舞」を本物の炎に見誤り、火事だと大騒ぎになったことがあったという。さらに、「もう一度描けといわれても、二度とは出せない色」と自ら述懐した背景の深い闇は、試行錯誤の末に到達した絶妙な色合いとなっている。この作品は個展の様式美と現実への観察眼を高い次元で融合させるという、大正期の御舟の先鋭的な問題意識を総括した最高傑作といえよう。（解説書から改変）
山��妙子（山種美術館館長）
■夭折の天才、速水御舟の代表作で貴重な文化財を色彩豊かに再現。速水御舟生誕130周年を記念し、限定130部を制作しました。
■原画所蔵館の山種美術館館長、山��妙子氏による作品監修を受け、厳密な原画校正を重ねました。名画の魅力をお手元でご堪能ください。
■画材の質感や豊かな色調を表現する高品質な複製技術「彩美版」。さらにシルクスクリーン印刷を加えて、格調高い仕上がりを実現しています。
彩美版とは
長年の経験により培われた画像処理技術と、高精度デジタルプリントにより、画材の質感と豊かな色調を再現した共同印刷の高級美術複製画です。一枚一枚に職人の手作業によるシルクスクリーンを施し豊かな色彩や筆遣いといった原画の持つ鼓動までも表現しています。
半世紀以上にわたり高級複製美術品の制作を続ける共同印刷の「彩美版」は、業界屈指のブランドとして、その高い品質から多くの美術愛好家の方に支持されており、美術関係者からも高い評価を得ています。
＊肩書は初版発行当時のものです。
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