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凛として、涼やかな土牛の「朝顔」
土牛(本名・義三)は牛年生まれ。漢詩に通じた父が中国唐の詩人寒山の五言古句の一節「土牛石田を耕す」からとって与えた雅号である。土くれの牛が石のごろごろした田を耕す、稲の収穫までいったい何年かかるだろう。息子の大成を願ってのことであったが、事実土牛は、日本美術院への初入選が1927(昭和2年)38歳、同人に挙げられたのが32(昭和7)年43歳であったから、その世に出るのは文字通り牛歩遅々であった。しかし、師小林古径にセザンヌ画集を見せられ、速水御舟の研究会に出席したことで、安田靫彦、古径らの新古典主義を脱し、取材も手法も新しい新画法に向かった。御舟の徹底デッサンを形の下に隠し、セザンヌ的な薄い絵の具で調子を整えるのである。
この朝顔にしても、市川の知人宅で竹矢来に絡ませた立派な朝顔を見て以来、種まきから始めて咲くまでを綿密に写生してその生態を知り、漸く摘めば汁が出るような蔓や葉の瑞々しさを掴めたという。これはただ一輪の朝顔である。しかし、薄い絵具を次々に重ねて次第に彩度(鮮やかさの度合い)を上げ、その上に濃い色をたらし込んで滲ませていく。張りと艶のある朝顔がそこに生まれる。一輪ではあるが、なんと誇らしく咲く一輪ではないか。※付属解説書から抜粋
細野正信(美術評論家)
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