季節の風物詩――奥村土牛の名品「栗」
カラーパンフレット請求はこちらから
格調高い優作「栗」
花木の一枝を手折って、画題とするのを切枝画(せっしが)という。古くは中国五代の徐熙(じょき)や宋代の趙昌(ちょうしょう)が知られているが、画面は小さくとも、精緻な描写により、独特な小宇宙を創出しているものが多い。ここでも土牛画伯は、鋭い折り口を見せる栗の一枝を細やかな筆遣いで描いている。若緑のイガ、葉の葉脈、虫食いの穴まで細密に描き出し、触れればカサカサと音のしそうな葉の質感の表現など、リアリティに満ちた画面にしている。栗、イガ、葉の表裏による色彩の変化と対比の妙、その上構図全体を褐色の枝がきりっと引き締めているのが心憎い。さすが古画に通じ、画格を重んじた画伯である。
この「栗」は、奥村土牛画伯76歳の頃の作品と思われる。文化勲章を受章して間もなくの時期であり、まさに高調期であった。それにしても描写の何と若々しいことか。出来栄えが気に入っていたのであろう、「土牛」のサインも力強い。
美術評論家 谷岡清(付属解説書から抜粋)
■本作では、原画に用いられた金箋(金箔を塗布した画紙)を再現するため、一枚ずつ手作業によるシルクスクリーンを施しています。熟練の職人による完成度の高い表現をご堪能ください。
*天然材料を使用し、一点ずつ手作りのため、寸法・重量などは、表記と異なる場合があります。
*作品の色彩など、カタログ/WEBサイトと現品で多少異なる場合がありますが、ご了承願います。
*当サイト掲載の写真・文章などの無断転写、複製、転載およびインターネットでの無断使用を禁じます。
彩美版とは:画材の質感と豊かな色調を再現するために生み出された新時代の画期的な技法による複製画です。最新のデジタル加工処理技術と高精度なプリントに、版画の技法であるシルクスクリーンを施し、原画の持つ微妙なニュアンスや作家の筆遣いといった絵の鼓動までもが表現されています。(彩美版は共同印刷株式会社の登録商標です)