限定500部
健やかな家族の絆と、根底に流れる祈りの精神――
文化勲章受章の巨匠による円熟期の代表作
優しく微笑ましい画題に込めた小倉画伯の精神
昭和から平成にかけて活躍した、日本画壇を代表する小倉遊亀画伯は、日常生活を主題にした作品を多数制作しました。多くの作品は健やかで幸福感に満ちた姿が描かれていますが、その根底には小倉画伯が大切にした思索や慈悲の精神が流れています。
本作品の核心は、インドの詩人・タゴールの詩「虚偽より真実を、闇より光を、死より永遠の生命を与えたまえ。」からきており、小倉画伯は生きることの喜びを感じ合う健やかな世界を描きたかったと語っています。世の中の悩みや苦しみを癒やす教えを解いた先人たちの英知に学び、歩調を合わせて歩きたい、という小倉画伯の思いから生まれました。
作品の創意と技巧
草案の元は、小倉画伯が中国旅行の際に訪れた龍門石窟から得ました。大仏に付き従う菩薩や弟子の彫刻に深い感銘を受け、それを形にしたいと考えます。
母親は釈迦如来を、少女は十大弟子を、犬は仏弟子を想起して描かれました。作品は3人の行列のみを描き、親和の情が強調されています。現代絵画は隅々まで描き込むことが主流ですが、本作品は余白になにも描きこまれていません。
シンプルな構図や色彩の中にも、退屈させない緊密に計算された画面づくり、描きこまれた籠と花・瑞々しい桃の描写など画伯の創意と技巧が凝縮されています。ゆったりと進む家族の姿は小倉画伯が歩んだ画道にも重なります。
本作は71歳の時に描かれ、第51回院展に出品されました。画業が円熟期に達した小倉画伯の手腕が発揮された名高い代表作です。見る人の気持ちを温もりで包むとともに、小倉画伯の気高い精神を感じとることができます。
作品解説
「径」がこの構図に確定するまで、画伯は14枚の下図を描いている。母親の大きさ、向きを模索し、最初は傘もなかった。子の傘、頭、袋の位置も何度か変えており、犬の位置や前足の形も修正している。最終的にほとんど子供の背中に鼻が付きそうな距離に置いた。画伯の言葉によれば、「愛情は、子供にくっついて行く犬であらわした。無心は、子供の表情とポーズであらわした」とのこと。犬も含め、家族への愛に満ちた作品である。
昭和41年、小倉画伯は生涯最初にして最後の海外の旅に出た。中国の三大石窟の一つ龍門石窟を訪れ、大仏や多数の仏像に深い感銘を受けた。仏に帰依し従う菩薩や弟子たちの彫刻群を見た時の感動を形にしたいと考え、「径」にその想いを込めてこの年の院展出品作とした。若い頃から禅に傾倒し、夫となった小倉鉄樹をはじめ、多くの禅師に教えを請い、「草にも木にも雲にも動物にも、通い合う愛のこころ」を表わしたのがこの絵である。(解説から一部抜粋)
谷岡 清(美術評論家)
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