限定150部
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悠々たる歴史を見つめた地に優美に咲く桜が紡ぐ、いのちの輪廻の物語
かつて約500年もの長きにわたり天皇の住まいとなっていた京都御所。その北西にあった近衛家は、朝廷に仕える公家の頂点に立ち、数多くの摂政や関白を輩出した名門の家柄です。その近衛邸跡に咲く枝垂桜は、御所のなかでも先駆けて春を告げる桜として毎年多くの人に愛でられています。
東京・目黒の郷さくら美術館より依頼された、「いつか世界に発表する日本画の桜の名作」としてふさわしい桜を探し求めていた西田俊英画伯は、近衛邸跡に咲く「弾むような枝ぶりと軽やかなリズムに揺れるはんなりと優美な」枝垂桜に出会ったとき、この桜しかない、と感じたそうです。
輝き昇る太陽の中、桜が蕾から花開き、爛漫と咲き誇るまでが描かれた左隻と、盛りを過ぎ、やがて月夜の花嵐の中、美しくも短い花の一生を終えていく様子が描かれた右隻により構成される四曲一双屏風は、一日の陽の移り変わりの中に桜花の一生が重ねられた、いのちの輪廻の物語です。一つの物語を読み進めるかのように展開する画面を通して、美しさ、華やかさ、温かさ、儚さ、懐かしさ、観る者の中に様々な感情が沸き上がり、何度でも見つめたくなる作品です。
若くしてその才能を認められ、現在は日本芸術院会員、日本美術院同人・理事として日本画壇の中心的存在の一人として活躍される西田俊英画伯。周囲の自然や大小の動物など、生けるものへの慈しみと深い洞察、そしてそこから紡ぎだされる西田画伯ならではの豊かな表現は、本作「近衛桜 日月(左隻)」からも十二分に感じることができます。
作品解説
左隻から朝が明けて陽に輝く希望に満ちた華やかな姿となり、やがて右隻へと陽は移り、しっとりと日暮れ、静かな三日月夜となる時の移ろい。そして小さな蕾から徐々に花開き咲き誇り、やがて儚く散りゆき、月も失せた薄闇に花嵐が舞う。
幾千、幾万の花弁が毎年のように生まれ爛漫となり、やがて旅立っていく。そんな桜花の一生を、日月の移り変わりと共に、いのちの輪廻をこの屏風の中に込めました。
師である奥村土牛先生が、描かれた桜の名作「醍醐」(山種美術館)の番組をテレビ番組の企画で制作することになり、制作過程の再現を弟子である私が描いたことがありました。ご遺族から託された貴重な紅色の臙脂綿(えんじわた)を用いて挑戦したのですが、見ているだけでは気付かなかった技法も、試行錯誤の模写の過程で勉強になり貴重な経験でした。師の真摯に桜に向き合う姿、いのちを描こうとする姿勢の跡を辿ることで、私自身もより深くいのちを考えることになりました。
この作品にも臙脂綿と土牛胡粉と呼ばれる特別きめ細かい白色とを合わせて溶くことによってできる発色の良い、柔らかで優しい桜色を塗り重ね、琳派的描法も使用し、華麗でありながらも格調のある桜の風情を描くことができたと思っております。
今回はこの左隻の「日」をメインにした屏風が版画となりましたが、画面を埋め尽くす優美な桜に、日本の美しい春の風景や見る方それぞれの懐かしい桜にも想いを馳せていただき、ひと時の幸せな時間を過ごしていただければと願っております。(付属解説書から抜粋)
西田 俊英
■著作権者による正式認可の証として、画面左下と奥付に承認印が捺されます。
彩美版とは:画材の質感と豊かな色調を再現するために生み出された新時代の画期的な技法による複製画です。彩美版の特徴である先端デジタル加工処理技術と高精度プリント、さらには一枚一枚職人の手刷りによるシルスクスクリーンを施し、豊かな色彩や作家の筆遣い、原画の持つ絵の鼓動までをも表現いたしました。(彩美版は共同印刷株式会社の登録商標です)
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