13歳で初勝負、以後60余度の勝負すべてに打ち勝ち、一度も負けなかった宮本武蔵。
「五輪書」は、剣豪の最後の到達点として書かれたまさに勝つための哲学書。この難解な希代の書を、「葉隠」「武士の道」の著者で、歴史学者の奈良本辰也先生がかみ砕いて解説。武蔵の真の姿を浮き彫りにします。
「今は価値観が大きく変わろうとしている。戦国時代もそうであった。そうした価値観が大きく変わる時代には、無政府的な現象があらわれる。つまり、激甚なら競争の時期に突入するのだ。競争の場は、勝負の世界である。負けたときは、それで一巻の終りということになる。
そうだ勝たねばならぬ。武蔵のように勝って勝って最後まで生き存らえなければならない。『五輪書』に教えられるものは、その勝つための哲学だ。そして方法である」
※解説書「五輪書について」から抜粋
宮本武蔵(1584〜1645年)は、江戸時代初期の剣術家、大名家に仕えた兵法家でもある。二刀を用いる二天一流兵法の開祖。京都の兵法家、吉岡一門との戦いや巌流島での佐々木小次郎との決闘が有名である。自著「五輪書」は広く海外でも翻訳されて多くの読者を得てきた。絵画の作品も多く、重要文化財に指定された「鵜図」「枯木鳴鵙図」「紅梅鳩図」などの作品に芸術家としての才能も認められている。
【収録内容】
第1巻 武蔵の生涯(47分)
武蔵の出生にふれ、13歳の初めての勝負から29歳の佐々木小次郎との果し合いまでの「闘いの半生」をたどり、その時代の剣客の生き方を語る。
第2巻 兵法の道(53分)
「五輪書」の「地の巻」を読みながら、後半生で完成してゆく武蔵の「兵法の道」を解説。
第3巻 勝つための哲学(46分)
さらに「地の巻」を読み、武蔵の「勝負に勝つための哲学」に迫る。
第4巻 死を恐れぬ心(45分)
実戦での戦い方を説いた「火の巻」を解説。武士の本質は「死を恐れぬ心」を持つことに尽きるとする武蔵の考え方から、武士道とは何かを論究する。
※このCDは朝日カルチャーセンター大阪での講座を収録・編集したものです。
講師 奈良本辰也
歴史家。1913年山口県生まれ。京都帝大国史科卒。新渡戸稲造が明治時代に英文で書いた名著「武士道」の翻訳・紹介者でもあり、「二宮尊徳」(岩波書店)、「葉隠」(角川書店)、「宮本武蔵五輪書入門」(徳間書店)などの著書もある。