試練と情熱の生涯を走り抜けた孤高の画家・ゴッホ
才気煥発した時期の名作
時代や文化を超えて支持されるオランダ出身の画家、フィンセント・ファン・ゴッホ。ゴッホの人生は波乱の連続でしたが、逆境のなかでも熱意を持って自らの芸術を追求しました。感情をぶつけるように描かれた力強い筆致や色使いの作品、また苦難に直面しても筆を握り続けた人間性は、人々の心を魅了しています。
ゴッホには「芸術家の集まる家をつくりたい」という、自分の理想郷をつくる夢がありました。その夢を追い求めて、35歳の時にパリから南フランスの陽光が降り注ぐ古都アルルに引っ越します。この町に移ったゴッホは、今までに培った経験が開花し多くの名作を矢継ぎ早に制作しました。「夜のカフェテラス」は、ここに移った間もないころに描いた作品です。
生き生きと色彩豊かに浮かびあがるアルルの夜
夜空に星が瞬く美しい夜、街中のカフェのガス灯には明かりが灯り、人々が夏の夜のひとときを過ごしています。「夜のカフェテラス」のモチーフになったカフェは、アルル中心部、フォルム広場に面する華やかな場所にあります。ゴッホは必ず対象やモデルを目の前にして描きましたが、この作品もアトリエではなく広場にイーゼルを置き、街灯やろうそくの明かりを頼りに制作しました。西洋では夜の情景を描く画家は稀有な存在でしたが、ゴッホは色の少ない夜をテーマに画面をつくる挑戦をし、いくつものすばらしい風景画を残しました。
本作品でゴッホは、夜空の色を伝統的に使われてきた黒や灰ではなく、青で表現する画期的な試みを行っています。またカフェに灯るガス灯の光は黄色や橙で表されており、補色関係の特性によって青の寒色は縮小し、黄色の暖色は膨張して立体的に見えます。明瞭な対比が画面に奥行き感を与え、美しい相乗効果が生まれているのです。筆の使い方についても、テラスのガス灯はたっぷりと絵の具を塗り込み、星空は縦横の直線的な筆致で、道は軽快にと、タッチを変化させて描き分け、表情豊かに夜の空気を演出しています。
クレラー=ミュラー美術館の正式許諾によりお届けする名画
「夜のカフェテラス」彩美版は、原画を所蔵するクレラー=ミュラー美術館の正式画像を使用し、美術館に色調の確認を受け、正式な複製画の制作許諾を得て、限定300部で発表いたします。ゴッホが大きな夢を抱き、最も創作意欲のみなぎっていた時期に生み出された、今も多くの人に愛され続けるゴッホの名作をぜひお手元でご堪能ください。
【作品解説】
自殺によって幕を閉じたゴッホの37年の生涯は、オランダ時代を「ホップ」とすれば、パリ時代は「ステップ」、南仏のアルル、サンレミ時代は「ジャンプ」とみることもできよう。生まれ、育ちから言えばゴッホは北(オランダ)の人であり、生涯を通じて光に憧れた、光の求道者だった。オランダからパリへ、パリからアルルへ、アルルからサンレミへとつながるゴッホの生涯は、ある意味では「もっと光を!」の生涯でもあった。その意味では彼がこよなく愛した花がサンフラワー(太陽の花)、つまりヒマワリであったのは象徴的だが、しかし彼はまた夜の画家でもあった。(中略)
「夜のカフェテラス」は、外の光景を描くという点でゴッホにとっては一種のチャレンジであった。色彩的にここで目立つのはテラスの黄色と、その上に広がる青い夜空で、青と黄色の原色のコントラストがゴッホらしい色彩の緊張感を生み出している。当時はまだガス灯の時代で、ゴッホはガス灯を頼りに描いたというのが大方の見解であるが、当時のガス灯がここまでまばゆい輝きを放つとは思えず、ゴッホが明るさを補強、誇張したとみるべきであろう。同じことは深夜のカフェの室内を描いた「夜のカフェ」についても言えよう。実際、ゴッホに夜の画家としての自負の念があったことは、弟のテオあての手紙にも見てとれる。
「ここにあるのは夜の眺めだが、黒は一切使っていない。使ったのは美しい青や緑、紫などだ。夜に屋外で描くのは楽しい」と述べている。別の手紙では「夜は昼より生き生きとして、色彩的にも美しい」と書いているが、この絵の前方(手前)は文様の青海波を思わせる石畳で、ここには人影は見えないが、ガス灯で照らされたテラスは客で賑わっている。この絵のほぼ中心にいるのが、客の注文を取っている白衣のギャルソンである。
ここではギャルソンの白とテーブルの白さが黄色に対する色彩的なアクセントとなり、同時に画面奥につながる遠近法的な空間の、いわゆる消失点ともなっている。夏ということもあって路上も人で賑わっているが、視線を上げれば、そこにあるのは大きなぼたん雪ををちりばめたような星空である。これら「巨大」と言ってもいい星たちは、アルル時代の「ローヌ川の星月夜」でさらにスケールアップして、サンレミ時代の有名な「星月夜」(ニューヨーク、近代美術館)へとつながってゆくのである。(付属解説書から一部編集・抜粋)
千足伸行(成城大学名誉教授、広島県立美術館館長)
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■2025年にゴッホ没後135年を迎えるのを記念して、不朽の名作を特別に制作いたしました。限定300部のご提供です。
■クレラー=ミュラー美術館の正式画像を使用。美術館に色調の確認を受け、正式許諾を得て発売いたします。
■額裏には、クレラー=ミュラー美術館の許諾の証として証明書が添付されています。
■一枚一枚職人の手作業でシルクスクリーンを施すことにより、原画の魅力であるゴッホの力強い筆致、豊かな色彩を表現しています。
■西洋美術に精通する千足伸行氏による本作品の魅力がよくわかるオリジナルの解説書が付属されます。
彩美版とは:長年の経験により培われた画像処理技術と、高精度デジタルプリントにより、画材の質感と豊かな色調を再現した共同印刷の高級美術複製画です。さらに一枚一枚職人の手作業によるシルクスクリーンを施し、「夜のカフェテラス」に表された豊かな色彩や筆遣いといった原画の持つ鼓動までも表現しています。(彩美版は共同印刷株式会社の登録商標です)
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