限定300部
家族に捧げる愛情と喜び
才気に満ちたモネが描き出す傑作
サロンへの挑戦と恋人との出会い
光りと自然の色彩を追求し続けた印象派の創設者・モネの作品は、観る人に安らぎを与え、世界中で愛されています。
モネは画家を目指して19歳でパリを訪れ、登竜門のサロン(官展)に挑んでいました。モネが25歳の時に、将来の妻となる7歳年下の女性、カミーユ・ドンシューと出会います。そしてカミーユをモデルに描いた作品がサロンで入選し、絶賛を博したのです。
夫、父として家族に向ける温かいまなざし
モネとカミーユの間に長男のジャンが誕生すると、モネは何度も妻と子をモデルに絵を描きました。2人がモデルの作品は、最初は客観的な視点で描かれていましたが、だんだんと幸せと喜びにあふれたスタイルに変わっていきます。
そして後に印象派のシンボルとなる「印象・日の出」を発表した翌年、本作を描きました。揺れ動く光と草原を吹き抜ける風、陽の光を浴びてたたずむ妻と息子。かけがえのない妻子の一瞬を捉えた姿は、モネの愛情にあふれた温かいまなざしが向けられています。
作品解説
モネの最初の伴侶であるカミーユ・ドンシュー(1847〜79年)は、ノルマンディー地方からパリに出てきたばかりの画学生であったモネと1865年出会い、その後しばしば彼の作品制作のモデルを務めた。最初は等身大の人物画、そして次第にモネの関心が風景そのものに移行していくにつれて、風景画のなかに点景としてそろえられた女性像のモデルとなった。(中略)
丘を散歩するカミーユとジャンの姿を、少し下方からの視点で捉えたワシントン所在のこの美しい作品は、その時期の代表的作例の一つである。1876年の「第二回印象派展」には、画家の出品した18点の作品のひとつとして「散歩道」と題され、展示された。描かれているのは、青い空に白い雲が浮かぶ夏の日和の下、日傘をさし、涼しげな白い衣装をまとったカミーユがこちらを振り向いた一瞬の様子。顔にかかった薄いヴェールが風になびき、逆光の中、彼女の憂いを帯びた表情がわずかにうかがえる。モネの作品系列のなかでは、自然の中に大きく人物を配置し、自然との調和を試みた比較的珍しい画面である。構図が作り出す記念碑的な大きさ、自然に即した即興的な光の効果、女性の描写が醸し出す抒情性などが一体となって生む鮮やかな効果は、才気が満ちたこの時期のモネが描き出した傑作のひとつに数えられるだろう。(解説書から抜粋)
高橋 明也(美術史家、三菱一号館美術館前館長)
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彩美版とは:長年の経験より培われた画像処理技術を元に、厳選された素材に高精度デジタルプリントを施し、画材の質感と豊かな色調を再現した共同印刷独自の高級美術複製画です。本作ではさらに一枚一枚職人の手刷りによるシルクスクリーンを施すことで、作品に表わされた豊かな色彩や筆遣いといった原画の持つ鼓動までも表現しています。半世紀以上にわたり高級複製美術品の制作を続ける共同印刷の「彩美版」は、業界屈指のブランドとして、その高い品質から多くの美術愛好家に支持されており、美術関係者からも高い評価を得ています。